2023年以降、中国はガリウム・ゲルマニウム(2023年8月施行)および黒鉛(2023年12月施行)の輸出管理を順次導入した。2025年以降はアンチモン・ビスマス・インジウムなど戦略的鉱物資源へと規制対象が拡大し、2026年3月現在も対象品目の見直しが続いている。これらの素材は、半導体製造・EV電池・防衛関連装備に不可欠な原料である。
中国当局はこれらの規制を「国家安全保障と国際義務に基づく正当な措置」と位置づけているが、日本が米国・オランダ等と協調して実施した半導体製造装置・材料の対中輸出規制への対抗措置として広く受け止められている。
規制強化以前、日本はガリウム国内需要の約6割、ゲルマニウムの約7割を中国からの輸入に依存していた。規制の段階的強化により、半導体・EV電池・防衛関連装備を手がける企業の調達コストが上昇し、一部部材で供給タイトネスが顕在化している。特に化合物半導体(GaN・GaAs)や赤外線センサー向け素材での影響が産業界から指摘されている。
経済産業省は「重要鉱物確保戦略」に基づき、豪州・カナダ・ナミビア等との官民連携プロジェクトを加速させている。JOGMECによる海外権益取得支援と、友好国間でのサプライチェーン構築(フレンドショアリング)が対中依存脱却の主軸として位置づけられている。
住友化学・JX金属等が国内リサイクル・増産体制の整備を進めるとともに、代替材料・代替技術の研究開発投資も拡大している。2022年施行の経済安全保障推進法に基づく特定重要物資の指定・支援措置の拡充が継続されており、国家備蓄の積み増しも政府目標として推進されている。
「戦略的互恵関係」は2006年の安倍・胡錦濤会談で確立された日中関係の基本枠組みであり、現在もその名称は維持されている。2026年3月時点では外相会談や経済ハイレベル対話のチャンネルは開かれており、外交上の完全な断絶には至っていない。一方で、輸出規制・安全保障分野での摩擦が常態化するなか、枠組みの「名称」と「実質」の乖離は徐々に拡大しており、関係再構築に向けた具体的な進展には至っていないのが現状である。
2026年3月の日中関係は、競争と対話が並行する「管理された緊張」の局面にある。レアメタルをめぐる構造的な依存と自立化をめぐる葛藤は、今後数年にわたり両国関係の試金石となり続けるだろう。