重要:現時点では「報道ベースの改定案」です
出入国在留管理庁の公式サイトに掲載されている「永住許可に関するガイドライン」は、本稿執筆時点(2026年7月28日)でも令和8年(2026年)2月24日改訂版のままです。本稿の新要件は、関係者取材に基づく各社報道の内容であり、入管庁の報道発表・正式ガイドラインとして公表されたものではありません。適用時期や具体額の算定方法など、各社の報じ方にも差があります。最終的な確定情報は、必ず入管庁の一次情報でご確認ください。
現行ガイドラインは、永住許可の要件を次の3点で定めています。
報道によれば、改定案は主に(2)独立生計要件と(3)国益要件を厳格化する内容です。出入国在留管理庁によると、昨年末時点の永住者は約94万7千人です。
年収・年金(独立生計)
日本人世帯の平均を上回る年収に継続して達していること。年金の受給見込額が、その年収水準で厚生年金に30年加入した場合相当に達していること。不足は預貯金等で補充可、との報道。
国益・配偶者特例
「自立した言語使用者」水準の日本語能力や制度理解を考慮。配偶者特例は婚姻3年→5年・在留1年→3年への引上げが報じられています(主に読売)。
改定案では、独立生計要件について「日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達している」ことを明記すると報じられています。現行ガイドラインには具体的な金額基準がなく、今回は運用の内側にあった水準をガイドライン本文に書き込み、あわせて水準を引き上げる趣旨と整理するのが妥当です。
ただし、報道時点では次の点が未確定です。
参考として、厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」では、2024年の1世帯当たり平均所得金額は全世帯で約575万円とされています。ただしこれは「所得」であり「年収」とは限らず、入管庁がこの統計を用いると決めた事実も確認できていません。現時点で「◯◯万円あれば大丈夫」と断定できる段階ではありません。
報道のもう一つの柱が、年金の受給見込額です。朝日新聞の表現では、「この年収水準で厚生年金に30年加入していた場合に受給できる額」に達していることを原則求める、とされています。
ここで重要なのは、本人が実際に厚生年金に30年加入していなければならない、という意味ではないという点です。あくまでその年収水準で30年加入したと仮定した場合の受給額を物差し(ベンチマーク)とし、申請者の将来受給見込額がそれに達しているかを見る比較モデルと読むのが自然です。
不足する場合は、補充できる預貯金などがあれば独立生計要件を満たすと評価する、と各社が報じています。資産の範囲(預貯金のみか、有価証券・不動産を含むか)や必要額の計算方法は、まだ示されていません。
実務上、まず着手すべきは自分の年金記録と受給見込額の確認です。「ねんきん定期便」「ねんきんネット」、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」などで確認できます。なお、現行の永住申請で求められる年金関係資料は過去2年間の納付状況であり、将来の受給見込額の確認とは別物です。
国益要件については、具体的な評価基準を新設すると報じられています。
現行ガイドラインでは、日本人・永住者・特別永住者の配偶者は、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上本邦に在留していれば、原則10年在留の特例が適用されます。
読売新聞などは、これを婚姻5年・在留3年に引き上げると報じました。実現すれば、申請時期が実質2年後ろにずれる可能性があります。なお、この配偶者特例の引上げを報じた社と報じていない社があり、正式ガイドラインの公表を待つ必要があります。
適用時期は、実務上もっとも敏感な論点です。各社の報じ方には差があります。
| 項目 | 報道の概要 |
|---|---|
| ガイドライン改定日 | 2026年10月1日付(朝日・共同など) |
| 原則の適用 | 令和9年(2027年)4月の申請分から |
| 年収要件の前倒し | 朝日:2026年4月以降の申請にも適用、との報道。読売:年収は10月、その他は来年4月、と要約。共同は前倒しに踏み込まず。 |
朝日の報じ方が正しければ、すでに審査中の申請にも年収要件が及びうる建て付けになります。永住許可の平均処理期間は公式の標準処理期間(4〜6か月)を大きく超え、実際には10か月前後に達するケースもあるため、「申請時点では旧基準だったのに、処分時点で新基準が適用される」事態が議論されています。ただし、申請日基準か処分日基準かも公式には未確定です。
令和8年(2026年)10月1日は、今回報じられたガイドライン改定の予定日であると同時に、永住許可手数料の20万円化(政令案)の施行目標日でもあります(詳細は当社ニュース手数料改定の整理を参照)。
ここでの切り分けが重要です。
当社からのご案内
本稿は2026年7月下旬の主要報道と、現行の入管庁ガイドライン(令和8年2月24日改訂)に基づく整理です。正式ガイドラインが公表され次第、内容を更新します。永住許可や在留資格のご相談は、個別事情により判断が大きく異なりますので、最新の一次情報とあわせて専門家への確認をおすすめします。
主な参照:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」/朝日新聞・読売新聞・共同通信・日本経済新聞など2026年7月24〜26日の報道。